観光と看板
日本は観光立国を目指して外国人観光客の誘致を進めており、2030年に6000万人という指標を掲げています。急成長するアジア諸国をはじめとする世界の観光需要を取り込むためには、外国人観光客が便利に滞在できるようインフラ設備を整える必要があります。その中で、看板は情報発信に欠かせないツールとなっています。
外国人観光客による訪日中の不満点
日本を訪れて良かった、また来たいと思ってもらうためには、旅行中の不満をなるべく取り除き快適な滞在をサポートすることが重要です。現状において、外国人旅行客が不満を感じやすいポイントは以下の様な項目となっています。
外国語サービスが少なく、英語の通用度が低い
無料Wi-Fiの整備が少なく、ネットが使えない
飲食店のシステムが分かり難い
現金しか使えない店が多い
地図が少なく電車の路線案内が複雑
不満点を大きく分けると「言語の壁による不便」と「情報・システム面での不便」の2点が存在します。日本語は海外で使われることが少ないため、言語が分からないという前提で商品やサービスの説明を行う必要があります。しかし、整備が不十分なケースはまだまだ多いと言えます。
観光における標識/看板(情報インフラ)の問題点
国土交通省が推進している「多言語案内表示ガイドライン」に基づいてサイン計画を立案し、外国人観光客に分かり易い表示を行うことが必要です。英語をはじめとした多言語での表記が普及することで、安心して街歩きを楽しむことができるようになります。(※詳細については「多言語サインページ」をご参照ください)
現在のところ、多言語表記の案内板は都市部を中心として整備が進められています。特に東京や大阪など、交通の拠点となりやすい場所では多言語化の普及が80%を超えている地域もあります。一方で、地方の観光地などでは整備が遅れており、日本語のみの表記が目立つケースも少なくありません。
近年、イルミネーションやナイタースポーツなど、夜間に開催されるイベントが増えています。周囲が暗い環境ではサインの内容を確認することが困難となるため、照明を備え付けたり内照式看板を設置するなどの対策が必要となります。日本は比較的治安が良いこともあり、夜間に外出する観光客も多いため、適切な対応が求められています。
観光では、目的地へ辿り着くために「マップ」が多用されます。スマートフォンなどでインターネットにアクセスできる環境があれば位置情報を容易に入手することができますが、日本はフリーで利用できる無線LANスポットの導入が遅れているのが現状です。
インターネットによる情報提供だけでなく、公共インフラとして駅や空港のほか、観光地や街中にマップおよび案内板の普及を進めることができれば、位置情報が取得しやすく、移動の困難が解消されます。
改善のための看板デザイン例
看板に記載されている情報の名称です
ピクトサインや多国語表記を用いることで、外国人観光客でもどんな情報が記載してあるのかを理解できます
看板設置場所の付近にある観光地を写真や文章で紹介します
行き方や最寄り駅などの記載があると訪れやすくなります
看板設置場所の付近にあるバス停や駅の位置、またバスや電車の行き先を記載します
地図中にも分かりやすく明記すると利便性が向上します
付近の観光地やお土産物屋など観光客が利用する施設を記載します
避難所などの防災情報も併記できます
看板設置箇所でWi-Fiを利用可能であることを周知します
同時に使用方法の案内を掲載することもできます
観光インフラにおける看板の用途と特徴
移動手段となる「交通」、情報を得る「通信」、公共機関・病院などの「社会資本」まで、観光に必要なインフラは多岐にわたります。そうした中、サインの役割は各種施設およびサービスの存在表記や指示/案内がメインとなります。観光インフラ整備における看板の使われ方には、下記のようなものがあります。
空港・駅・バス停といった公共移動手段の要となる場所には、その所在を知らせるサインが備え付けられます。内容としては、名称のほかに行き先や時刻表といった情報が示されます。また、ターミナル内の施設やタクシー乗り場といった場所にも、同様の案内が存在します。
移動手段の利便性や分かりやすさは、観光を行う上で大変重要な要因となります。移動に要する時間および乗降方法といった情報が提供されることで計画が立てやすくなり、時間のロスを防止できます。
現在はインターネットで事前に情報を入手できるため、看板は現地での目印や案内としての役割が主となってきています。そのため、判別が難しいデザインや老朽化で識別できない場合はリニューアルし、一目で分かる状態にしておくことが大切です。
道路情報は、道先案内はもちろんのこと、安全性についても分かりやすい表示が求められます。例えば、立ち入りが禁止されている道路や区域、また工事現場などでも危険を避けるための情報提供が必要です。
道路情報の整備は全国的に進められていますが、日本語以外の表記や外国人にも判別しやすいピクトサインの適用といった「ユニバーサル化」が今後の普及の課題となっています。観光において、道路に設置されたサインは現地での生情報となります。情報量は詰め込みすぎず、簡潔で認識しやすい内容にすることが無難です。
観光地の看板は、名所や観光資源などを紹介する「説明」とマップや進行方向などの「案内」が主な内容です。
観光地に設置される場合は、その土地がもつ文化的な特色や景色を損なわないように、外観の仕様を定めたり配色を制限するなどのルールが必要となります。また、商業広告などが乱立してしまうことは景観の阻害に繋がる恐れがあるため、こうした部分にも規制が求められます。
観光地における看板は、その内容に応じてサイズ・外観・デザイン・照明の有無などが設定されます。環境により千差万別となりますが、あまり簡素すぎると安っぽく見えてしまい観光地全体に影響を与えてしまうため、見られる対象物として観光資源とマッチした仕様を決定することが望まれます。
公衆無線LANスポットなど、インターネットへの接続が可能なエリアを示す看板です。現在では、通信キャリアごとに異なるデザインが用いられており、空港や駅といった公共性の高い場所で利用されています。
外国人旅行客を中心として、日本国内でのインターネットの利用に制限があるケースは少なくありません。観光情報の入手や交通機関の利用において、インターネットが担う役割は大きくなっており、誰もが不便なく利用できる環境整備が急がれています。
内容としては、Wi-Fiや通信を表すピクトサインを表示するなど、言語が分からなくても認識可能なデザインの構成が求められます。
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